小学校入学という晴れ舞台を彩り、6年間の学校生活を共にするパートナーとして、日本の小学生に長く親しまれているランドセル。実は日本独自の文化であり、海外では国ごとに様々な通学カバンが使われていることをご存知でしょうか。

本記事では、日本が誇るランドセル文化のルーツを紹介するとともに、世界各国の通学カバン事情を詳しく解説します。

ランドセルは日本独自の通学カバン文化

ランドセルの起源は、江戸時代末期にまでさかのぼります。元々はオランダから輸入された軍用の布製リュック「背嚢(はいのう)」がルーツとされており、オランダ語で背負い鞄を意味する「ransel(ランセル)」が語源になったといわれています。

子ども用の通学カバンとしてランドセルが本格的に採用されたのは、明治時代以降。100年以上の歳月をかけて改良が重ねられ、現在では、機能性と耐久性を兼ね備えた、日本の学童文化を象徴するアイテムとなりました。

ランドセルの歴史やルーツ・語源・由来を徹底解説!知っておきたいランドセルの「はじまり」と「今」

小学校入学に欠かせないランドセル。子どものころから当たり前のように口にしてきたその名称ですが、「なぜ“ランドセル”っていうの?」と疑問に思ったことがある人も多いのではないでしょうか。 実はランドセルには、深い歴史や日本らしい文化的背景があるのです。 本記事では、ランドセルのルーツから現在の進化までを…

そんなランドセルの大きな特徴として挙げられるのが、丈夫な構造と高い実用性です。

  • 6年間毎日使い続けることを前提に設計・製造されている
  • 教科書やノート、体操服や水筒といった多くの荷物を収納できる
  • 子どもの体格に合わせた背負いやすい設計になっている

上記のような特徴を備え、子どもの成長や通学環境を徹底的に考慮してつくられているランドセルの質の高さは、世界的にも高く評価されています。

世界各国の通学カバン事情とは?

世界各国の子どもたちは、それぞれの文化や教育環境に適した通学カバンを使用しています。

ドイツ:シュールランツェン

ドイツでは「シュールランツェン(Schulranzen)」と呼ばれる学校用のリュックが一般的です。

ランドセルと同様に背負うタイプのカバンで、耐久性に優れた素材でつくられています。日照時間が短く、真っ暗な時間帯に登校しなければならないというドイツならではの通学事情に対応し、反射材がついているのも特徴です。

ただし、日本のランドセルとは異なり卒業まで同じものを使い続ける文化はなく、子どもの成長や好みの変化に応じて買い替えることが多いとされています。

イギリス:サッシェル

イギリスでは、クラシックなデザインが特徴の「サッシェル」という通学カバンが使われています。教科書を全て学校に置いておくシステムが採用されていて持ち運ぶ荷物が少ないこともあり、サイズは日本のリュックサックよりやや小さめです。

もともとは学生用のカバンとして使われていましたが、現在ではファッションアイテムとしても人気を集めています。

ブラジル:モッシーラ・コン・ホジーニャ

ブラジルの子どもたちにとっておなじみなのが、「モッシーラ・コン・ホジーニャ」と呼ばれるキャスターつきのカバンです。

キャスターがついたタイプが人気を集める背景には、重い教科書やノートを毎日持ち帰らなければならないという事情があります。

車やバスで送り迎えをしてもらうことが一般的でカバンの重さを気にする必要がない点も、モッシーラ・コン・ホジーニャが広く取り入れられている理由のひとつだといえるでしょう。

フランス:カターブル

フランスは日本と同様、全国共通の通学カバンスタイルが定着している数少ない国のひとつです。「カターブル(Cartable)」と呼ばれる、横長で持ち手がついた通学カバンを主に使用します。素材は革で、色は黒または茶色が主流。型崩れしにくい頑丈な作りと、中身が整理しやすい仕切りが特徴です。

ファッションアイテムとしても人気があり、子どもの個性や好みに合わせて、キャラクターやブランドの多様なデザインから選ぶことができます。

中国:ツーパオ

中国では「ツーパオ(書包)」と呼ばれる、日本のランドセルよりやや小さめのショルダーバッグが一般的。無地のデザインがほとんどで、素材は布や皮革が多いです。

最近ではリュックを使う子どもも増えている他、大量の学用品を持ち帰らなければならず荷物が重くなりがちであるため、キャスター付きのバッグも多く使用されています。

その他の国々の通学カバン

台湾やアメリカ、オーストラリアなどでは、自由に選べるリュックサックが主流です。ロシアやインド、アルゼンチンなどでは、日本の中高生が使用しているような手提げ式のかばんが広く使用されています。

なお、こうした国々でも、教科書や辞書などの重い荷物を毎日持ち歩く必要がある場合には、重さ対策としてキャスターつきのカバンを使用する子どもが多く見られます。

このように、世界各国では様々な通学カバンが使われています。ただ、日本のように6年間同じカバンを使い続ける文化は、世界的に見ても非常に珍しいです。

ランドセル文化が海外で認知されたきっかけ

日本のランドセル文化は、2010年代に入ると、以下2つのきっかけで徐々に海外で認知されるようになりました。

日本のアニメ・漫画

日本のアニメや漫画は、今や世界中で圧倒的な人気を誇るカルチャーとなっています。

中でも「ドラえもん」や「ちびまる子ちゃん」といった人気作品では、小学生のキャラクターがランドセルを背負って登校するシーンが数多く描かれています。そうした描写を通じて、ランドセルは「日本の子どもの象徴」として広く知られるようになりました。

ハリウッド女優のランドセル愛用

人気ハリウッド女優のズーイー・デシャネルが、ファッションアイテムとしてランドセルを愛用していたことも、ランドセル文化が世界に知られるようになったきっかけのひとつです。

2014年、ニューヨークの街で彼女がベージュのトレンチコートに赤いランドセルを合わせた姿をパパラッチが撮影。その写真は瞬く間に世界中のメディアで取り上げられ、スタイリッシュなコーディネートとの組み合わせがファッション感度の高い若者たちの間で大きな話題となりました。

日本と海外の通学カバン事情に関するよくある質問

世界各国の通学カバン事情に関するよくある質問をまとめました。

Q:なぜ日本だけランドセル文化が定着したのでしょうか?

明治時代の学習院での採用を起源とし、平等な教育機会の提供と子どもの体力作りという教育理念のもとで発展しました。長い年月をかけて現在の形に改良され、小学生が6年間をともにする相棒として親しまれ続けています。

Q:海外の通学カバンと日本のランドセルの最大の違いは何ですか?

使用期間の長さです。海外の多くの国では成長に合わせてカバンを買い替えることが一般的ですが、日本のランドセルは6年間使い続けることを前提として設計されています。また、安全性や機能性への配慮も日本のランドセルの特徴です。

Q:海外で人気の通学カバンの特徴を教えてください

軽量性を重視したリュックサック型や、重い教材に対応したキャスターつきカバンが人気です。キャラクターやブランドロゴが入ったデザイン性の高いものも選ばれています。ただし、耐久性よりもデザインや価格を重視する傾向があります。

通学カバン事情は国によって様々

世界各国の通学カバン事情を見ると、その多様性に驚かされます。背負い式、手さげ式、ショルダー式など、それぞれの国の教育システムや文化に合わせて様々な形状のカバンが使用されています。

一方で、日本のランドセル文化は世界的に見ても非常にユニークな存在です。同じ通学カバンを6年間使い続けるという文化は珍しく、その機能性と耐久性は海外からも高く評価されています。海外の多様な通学カバン文化を知ることで、改めて日本のランドセルの価値と魅力を再認識していただけたのではないでしょうか。

お子さまのランドセルを選ぶ際には、見た目のデザインだけでなく、機能性や細部に込められた工夫にもぜひ注目してみてください。

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